東京高等裁判所 平成2年(行コ)179号 判決 1991年8月26日
静岡県伊東市玖須美元和田七〇四番地
控訴人
須田暉
右訴訟代理人弁護士
鶴見祐策
同
田中晴男
静岡県熱海市春日町一丁目一番地
被控訴人
熱海税務署長 石田尚
右指定代理人
武田みどり
同
村上恒夫
同
伊藤久男
同
松井運仁
主文
一 原判決主文第一項を次のとおり変更する。
1 被控訴人が昭和五七年三月一三日付けで控訴人に対してした、昭和五五年分所得税について所得金額を金六六二万二〇〇七円とする更正処分のうち、金六五四万七七八八円を超える部分及び右部分に対する過少申告加算税の賦課処分を取り消す。
2 控訴人のその余の請求を棄却する。
二 訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の求める裁判
一 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が昭和五七年三月一三日付けで控訴人に対してした、
(一) 昭和五三年分所得税について所得金額を三〇八万九八円とする更正処分のうち、一七九万一七八六円を超える部分及び過少申告加算税の賦課部分
(二) 昭和五四年分所得税について所得金額を二六六万二五三一円とする更正処分のうち、一五六万四八一〇円を超える部分及び過少申告加算税の賦課部分
(三) 昭和五五年分所得税について所得金額を六六二万二〇〇七円とする更正処分のうち、二五一万九〇〇一円を超える部分及び過少申告加算税の賦課部分を取り消す。
3 訴訟費用は第一、二番とも被控訴人の負担とする。
二 控訴の趣旨に対する答弁
控訴棄却
第二当事者の主張及び証拠
原判決事実第二、第三及び当審証拠目録記載のとおりである。ただし、次のとおり訂正する。
1 原判決八丁裏一〇~末行目の「四、〇七〇、〇〇〇」を「三、六七〇、〇〇〇」、末行目の「四二、三七〇、〇七五」を「四一、九七〇、〇七五」、九丁表四行目の「四二、八七〇、〇七五」を「四一、九七〇、〇七五」、九丁裏九行目の「四、〇七〇、〇〇〇」を「三、六七〇、〇〇〇」、一〇行目の「四二、三七〇、〇七五」を「四一、九七〇、〇七五」、末行目の「四、〇七〇、〇〇〇」を「三、六七〇、〇〇〇」、一一丁表末行目の「四二、三七〇、〇七五」を「四一、九七〇、〇七五」、一二丁表九行目の「七、七五二、二〇一「を「七、三五二、二〇一」、裏三行目の「六、八〇三、九八一」を「六、四〇三、九八一」に改める。
2 同一五丁裏末行目の「(2)の」の次に、「預金を控訴人がしたことは認め、その余は否認する。(3)の」を加える。
3 同一六丁表六~七行目の「二、一九二、五二〇」を「四〇、六六七、四二八」に改める。
理由
一 本件課税の経緯等について。
当事者間に争いがない。
二 昭和五三年度の課税について。
原判決二六丁裏六行目から三六丁表三行目までを引用する。ただし、次のとおり訂正する。
1 原判決二六丁裏七行目、二七丁表一行目、三五丁表三行目の「原告本人尋問の結果」の次に「(原審、当審)」、二六丁裏九行目の「原告本人尋問の結果」の次に、「原審、当審」、三一丁表四行目の「原告本人尋問の結果」の次に「(原審)」を加える。
2 同二六丁裏八行目の「甲第一号証、」の次に「四七号証の一ないし三二」を加える。
3 同三二丁表一行目の「、証人渡辺義邦の証言」を削除し、裏二行目の「渡辺」を「杉山喜朗」に改める。
4 同三五丁表四行目の「甲第二四号証」の次に「、三八号証の一ないし六」を加える。
5 同三五丁裏八行目の次に、次を加える。
「なお、控訴人は、前示甲第一号証の記載を裏付ける資料であると主張して当審で書証を提出した。それらを見ると、甲第一号証No.4の小田原屋への四万九四三〇円の支払については、控訴人本人尋問の結果(当審)によって成立が認められる甲第四五号証(小田原屋金物店作成の領収書)、植松に対する三万五〇〇〇円の支払については、同様に成立が認められる甲第四六号証(株式会社植松作成の領収書)に符号する記載があることが認められる。No.5の昭和五三年分の通信費・電話代のうち、二、三、四、五、六、一〇月分については、控訴人本人尋問の結果(当審)によって成立が認められる甲第二七号証の一ないし三(静岡銀行作成の同銀行の口座からの入出金一覧表)、成立に争いのない甲第二八号証の一ないし六(日本電信電話公社作成の領収済通知書)によれば、控訴人の主張する金額が支払われたことが認められる。No.6の接待費については、控訴人本人尋問の結果(当審)によって成立が認められる甲第三一号証の一ないし六(伊東大同会作成の領収証)によれば、その一部に相当する一万八〇〇〇円が同会に支払われたこと、修繕費については、同様に成立が認められる甲第三二号証の一ないし三(丸和自動車株式会社作成の領収証)によれば、そのうちの九万七〇二〇円が丸和自動車に支払われたこと、同様に成立が認められる甲第三五号証(中路自動車整備工場作成の領収証)によれば、そのうち中路分一五〇〇円が支払われたこと、損害保険料については、弁論の全趣旨によって成立が認められる甲第三三号証の一、二(伊東市建築大工組合労災保険料作成の労災保険料領収書)によれば、そのうち、労災分二万五七二六円が伊東市労災保険事務担当者に支払われたこと、消耗品費のガソリン代については、弁論の全趣旨によって成立が認められる甲第三六号証の一ないし三(出光興産株式会社等作成の振込通知書)によれば、そのうち四、五、六、七月分として計上してある金額が支払われたことが認められる。No.7の組合費については、控訴本人尋問の結果(当審)によって成立が認められる甲第二九号証の一ないし三(伊東職業訓練協会作成の会費領収証)、三〇号証(伊東商工会議所作成の領収書)によれば、そのうち、「職業」(職業訓練協会)、「商工会」(商工会議所)の会費は支払われたこと、控訴人本人尋問の結果によって成立が認められる甲第三四号証の一ないし三(伊東市建築大工組合作成の領収証)によれば、大工組合の会費一万二〇〇〇円相当が支払われたこと、外注工賃の支払については、控訴人本人尋問の結果(当審)によって成立が認められる甲第三七号証(小島屋有限会社作成の領収書)には、そのうちの小島屋分の支払を示す記載があること、同様に成立が認められる甲第四四号証(殿岡畳店作成の領収書、)には殿岡分一万五〇〇〇円の記載があること、給料賃金については、同様に成立が認められる甲第三八号証の一ないし六(控訴人がカレンダーに記載したメモ書、一月、三月ないし七月分、うち一月分の甲第三八号証の一は、前示甲第二四号証と同一)に、その旨を記載したメモ書のようなものがあることが認められる。
しかし、前示右甲第三七、四四、四五、四六号証は、本件控訴後平成三年五月ころに作成されたものであることが控訴人本人尋問の結果(当審)によって明らかであり、その内容の信用性に疑問があるから、上記の趣旨の資料としては採用しがたい。甲第三八号証の一ないし六は、もともとおおざっぱなメモ書きであるうえ、控訴人本人尋問の結果(当審)によれば、中道と小川のいずれに対するものであるかでさえ、第三者には把握し難い程度のおおまかなものであることが認められるから、これらは課税の基礎を算出する資料として用いるに耐えないというべきである。また、その他の経費を説明するために提出された前述の資料については、確かに、経費の一部の項目について立証している部分があることは前示のとおりであるが、本件において、被控訴人は、昭和五三年度の所得額を一括推計しており(右推計が合理的なものであることは前示のとおりである。)、項目の部分的な実額を主張、立証することによっては、右推計の合理性を否定するに足りず、当審において控訴人が提出した前示の証拠によっても、右判断は左右されないというべきである。」
6 同三五丁裏一〇行目の「三、六一四、六六六」を「三、一四三、九八一」に改める。
三 昭和五四年度の課税について。
原判決三六丁表五行目から四三丁裏八行目までを引用する。ただし、次のとおり訂正する。
1 原判決三六丁裏九、末行目、三七丁裏一行目、五行目、四二丁裏末行目、四三丁表四行目の「原告本人尋問の結果」の次に「(原審)」、三八丁裏八行目、四〇丁裏四行目、四一丁表一〇行目、四二丁裏三行目の「原告本人尋問」の次に「(原審)」を加える。
2 同三六丁表八行目の「四、〇七〇、〇〇〇」を「三、六七〇、〇〇〇」に改める。
3 同三八丁裏五行目から七行目までを削除する。
4 同三九丁表六行目、裏末行目、四〇丁表六行目、四一丁裏五行目の「甲第三号証」を「甲第二号証」に改める。
5 同四二丁表七行目の「(2)」を「(3)」に改める。
6 同四二丁表八~九行目の「合計……こと」を「支出」に改める。
7 同四二丁裏四行目の「が、」から九行目の末尾までを、「。前記甲第一号証には昭和五三年度の期末在庫として二〇〇、〇〇〇円が記載されており、右甲第一、二号証各記載の在庫の存在を疑うべき特段の事情は見当たらない。したがって、控訴人の昭和五四年度の期首棚卸金額は、二〇万円であると認められる。」に改める。
8 同四三丁裏一行目の「三四、六一七、八七四」を「三四、八一七、八七四」に改める。
9 同四三丁裏四~五行目の「三、〇五三、九八一」を「二、八五三、九八一」に改める。
四 昭和五五年度の課税について。
1 譲渡所得及び事業所得について。
原判決四三丁裏一〇行目から四四丁表六行目までを引用する。
2 経費について。
(一) 争いのない事実について。
原判決四四丁表八行目から四四丁裏一行目までを引用する。
(二) 給料債権について。
(1) 原判決四四丁裏三行目から四五丁表二行目までを引用する。ただし、同四四丁裏三、五行目の「原告本人尋問の結果」の次に「(原審)」を加える。
(2) なお、被控訴人は、控訴人が樋口及び山下に前示のとおり給料を支払ったことを否定する資料として、名古屋国税局の係官作成の山下に対する平成三年一月二四日の聴取書(乙第一七号証)を提出した。しかし、右聴取は、平成三年一月に至り行われたものであること、時期や金額についての記憶があいまいである(短期雇用の人夫が受け取る賃金の額などについて、受領した側で長期間にわたり詳細を記憶していないのはむしろ当然であろう。)ことなどからみて、右書証の存在によっても、前示認定は左右されない。
(三) 雑費について。
(1) 原判決四五丁表四行目の冒頭から末行目の「できない」までを、右「できない」の次に「。」を加えて引用し、五~六行目の「サガミヤコピー代」の次に「他」を加える。
(2) コピー代他九七四円については、業務との関連性を認めるに足りる資料が提出されていないので、認めることができない。
(四) 福利厚生費、貸倒金及び債権焼却特別勘定繰戻金について。
原判決四五丁裏六行目から四八丁裏一行目までを引用する。ただし、同四五丁裏一〇行目、四六丁裏八行目の「原告本人尋問の結果」の次に「原審」を加える。
3 そうすると、控訴人の昭和五五年分の所得合計は、事業所得の収入の合計五一二一万六三九八円から、損金四四四一万八四五円及び譲渡所得のマイナス分二五万七七六五円を控除した六五四万七七八八円と認められる。したがって、控訴人の昭和五五年分の所得金額を六六二万二〇〇七円とする被控訴人の更正処分及びこれに対する過少申告加算税賦課決定処分中、前示六五四万七七八八円を超える部分及びこれに対する過少申告加算税の賦課処分は違法である。
五 結論
以上のとおり、控訴人の本件各請求中、昭和五五年分所得税について所得金額を六六二万二〇〇七円とする更正処分のうち、六五四万七七八八円を超える部分及びこれに対する過少申告加算税の賦課処分は違法であるから取り消すべきであり、その余は棄却すべきである。
よって、民訴法三八六条及び三八四条により主文第一項のとおり原判決主文第一項を変更し、訴訟費用の負担について民訴法九六条、九二条及び八九条を適用して主文第二項のとおり判決する。
(裁判長裁判官 高橋欣一 裁判官 伊藤博 裁判官 池田亮一)